大判例

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東京地方裁判所 昭和34年(ワ)1051号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔事実と判断〕原告は昭和三〇年三月二六日宗教法人鳥森神社からその所有の港区芝新橋一丁目一四番地の五宅地六一坪三勺を買い受けて所有権を取得したが、右土地のうち北東部一四坪の部分に、被告向山道春が本件建物を所有して右一四坪の本件土地を占有し、被告会社が本件建物を占有使用している。原告は、被告等の本件土地占有を不法占有なりとして、所有権に基いて、被告向山に対しては本件建物収去土地明渡および損害金の支払を、被告会社に対しては本件建物退去土地明渡を求めた。被告等は、被告向山が本件土地について賃借権をもつている旨抗弁する。すなわち、被告向山は昭和二二年一一月三〇日旧宗教法人鳥森神社から本件土地を賃料一カ月二八円毎年六月、一二月払い、期間二〇年と定めて賃借し、同年一一月二一日本件建物を買い受け所有権取得登記をしたが、右賃貸借については、それが旧宗教法人令第一一条の不動産の処分行為に該るとしても、明示または黙示による総代の同意および神社本庁の承認を経ているから有効であり、新宗教法人法の施行によつて新鳥森神社が賃貸人の地位を承継し、従つてまた新鳥森神社から本件土地を買い受け取得した原告も賃貸人の地位を承継した、というのである。右賃貸借の有効なことについて、被告等はさらに、被告向山が本件賃貸借の締結につき善意無過失であつたから、宗教法人令第一一条第三項に基き旧鳥森神社にその履行を求めることができ、従つて本件土地の承継取得者である原告にもその履行を求め得ること、昭和二六年四月三日新宗教法人法の施行によつて、本件土地のような境外地については総代の同意、神社本庁の承認は不要となつたから、その欠缺という瑕疵は治癒されたこと、無効行為の追認があつたことなどを挙げて主張した。

判決は、新鳥森神社が昭和二八年八月二六日宗教法人法に基き設立されて、同時に旧鳥森神社が解散し、宗教法人法付則第一八項により新鳥森神社がその権利義務を承継し、以後新鳥森神社の財産関係はもつぱら宗教法人法によつて規律されることになり、新鳥森神社は旧鳥森神社の権利義務の承継により賃貸人の地位を承継したものというほかはない、と判断し、本件土地は宗教法人法にいわゆる「境内地」ではないから、新鳥森神社が本件土地を賃貸するについては神社総代の同意も神社本庁の承認も必要としないと説いたうえで、次のように判示して被告等の抗弁を容れた。曰く、

「ところで、賃貸人の地位を承継した新しい賃貸人は従来の賃貸借契約の内容はもちろんのこと契約の効力についても従来の状態を受け継ぐのが通則であるけれども、それは新旧両賃貸人に適用される法律が同一であるがためである。地位の承継による賃貸人の交替により契約内容そのものは同一でも、契約の当事者は別人になるわけであるから、これに適用される法律が異なる以上、契約の効力はそれに従つて別個に判断されなければならないと解するのが相当である。賃貸借のごとき継続的な法律関係においては、新たな法令により法律行為の要件が緩和され、過去にされた行為自体で有効な要件を備えることになり、しかも賃貸人の交替した結果新たな法令の適用を受けるに至つたときは、そのときから将来に向つてその賃貸借契約は有効なものとなつたと解して差支えなく、またそのように解することは当時契約の効力についてなんら争つていない当事者双方の意思にそう所以であろう。本件について旧鳥森神社が賃貸人である賃貸借契約は、宗教法人令の適用を受け、総代の同意、神社本庁の承認がない以上無効といわざるを得ないが、新鳥森神社が賃貸人である賃貸借契約は、宗教法人法の適用を受けるので、総代の同意、神社本庁の承認を必要とせず、有効であるといわなければならない。このことは、新鳥森神社があらためて賃貸借契約を結んだ場合を考えれば、極めて容易に理解されるであろうが、新たな契約締結行為のない賃貸人の地位の承継においても、さきに述べたとおり、この理は変るところがないのである。してみれば、新鳥森神社と被告向山との間における本件土地の賃貸借は有効であるから、新鳥森神社から本件土地を買い受けた原告に対しても効力を有することはいうまでもない。」

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